川崎市への要望と回答


水の会は神奈川県内の諸団体と共同行動を毎年続けてきました。今年の3月に川崎市に申し入れした回答が届きましたので紹介します。
 皆様からの感想。ご意見お待ちしています。
秋に川崎市上下水道局の方を招いて学習会を予定しています。会は、地元の自己水源を活用する浄水場は必ず必要になり、復活できると思います。井戸のほとんどが残ったのがその根拠です。詳しくは次回にお伝えします。hzc00317@nifty.com 町井弘明

2020年6月16日
かわさきの安全でおいしい水道水を守る会 代表 町井弘明 様
第45回全国公害被害者総行動 神奈川共同行動実行委員会 実行委員長 住谷和典 様

川崎市上下水道局
持続可能な開発目標(SDGs)を推進し災害に備え安定した水確保のための要望書に対する回答
周知のように、2015年9月に国連サミットで採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に示されている持続可能な開発目標(SDGs)は、17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。 SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても行政をはじめ各企業、教育等において積極的に取り組んでいます。外務省では「SDGsを通じて、豊かで活力のある未来を創る」と呼び掛けて、SDGsを原動力とした強靭かつ環境にやさしい魅力的なまちづくりの展開を推進しています。
17のゴールのうち目標6(安全な水とトイレを世界中に)、目標11(住み続けられるまちづくりを)、目標13(気候変動に具体的な対策を)のように、生活空間のインフラの安全・安心のために緊急対策の重要性を掲げ、目標9では、強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図るとしています。
私達のまち川崎市の市民が水を確保して安心に暮らし、「最幸のまち」であり続けるためには、このSDGsの考え方に基づいた早急な対策が求められます。川崎市は国からSDGs未来都市に選定されましたが、市長のご理解ご指揮の下、各関係部署で以下の提案をご検討ご協力いただき、SDGs先進都市として発展することができますように要望します。
1 生田浄水場用地の有効利用を図る事業について
生田浄水場用地は現在、管理委託事業者が決まり、市民意見を集約し、具体化する段階になっていますが、将来の生田浄水場復活のためにも、事業者との契約は川崎市が必要とするときは契約を打ち切ることができるようにお願いいたします。またその時に、世界各国の民営化の事例のような莫大な違約金を払うことのないようにしていただくようにお願いいたします。

【回答】
生田浄水場用地の有効利用については、水道事業及び工業用水道事業の再構築計画により、水道事業の浄水場を長沢浄水場に集約し、生田浄水場は工業用水道事業専用の浄水場となったことから、水道事業で使用していた用地について、工業用水道事業の浄水場更新用地として活用するまでの間、地方公営企業として収益性の確保を前提とした有効利用を行うものです。ふれあい広場、多目的広場や、スポーツ広場等、地域住民等に利用していただけるよう整備します。
有効利用を図る事業者については、令和元年10月に株式会社川崎フロンターレに決定し、(仮称)フロンタウン生田として整備することを公表したところです。有効利用用地は、将来の生田浄水場の更新用地と位置付けていますので、土地の賃貸借契約に当たっては、確実に用地が返還されるように事業用定期借地権設定契約を締結する予定です。令和3年度の締結を目指しており、まずは20年間の契約を締結し、協議により双方が合意した場合には、1回に限り再契約をすることができるものとしています。
有効利用用地は大切な公共の財産であることを念頭に置きながら、事業を進めていきます。

2  市の保有する多摩区の井戸の活用について
1) 2016年4月に取水を停止した多摩区の井戸は菅、中野島に16か所あります。このうち、災害用に利用するために井戸として残す井戸が7か所で、残りの9か所は用地を土地活用するとのことです。川崎市上下水道局の説明では土地活用として扱う井戸の処理方法について、「周囲の水脈及び水質に影響を与えないよう地中の構造物を残したまま天然砂利を充填しています。また、井戸の上部から雨水が浸透しないよう頂部をコンクリートにて閉塞し、遮水を行っています。」(川崎市上下水道局水道部水道計画課2020年2月24日回答)とのことですが、地下水脈に影響を与えないよう、今後も慎重に工事を行ってください。この2016年4月からの飲料用井戸の活用停止に伴い、すべての井戸の水質や水位が現在どうなっているのかをお知らせください。

【回答】
 災害用に利用する7か所の井戸については、地下水質の把握と監視を行う必要があることから年に2回、夏季と冬季に水質試験を実施しています。また、地盤沈下等の障害を起こさずに、地下水を適正に利用するため、毎月の水位測定も実施しています。水質試験と水位測定は、2016年4月以前から実施していますが、その前と現在に至るまでの間、水質や水位はほとんど変わっていません。

2) 災害用に有効活用する井戸について、どのように管理がなされていますか。また各家庭が保有する井戸の維持管理はどうなっていますか、可搬式膜ろ過装置3台で合計1日300トン水を汲むとのことですが、その装置の設置はどうなっていますか。また、災害時どのように運用するのでしょうか、教えてください。

【回答】
上記の水質試験と水位測定に加え、良好な施設環境を維持するため、災害用に利用するさく井の敷地内においては、年に4~5回の植樹管理、毎月の水位測定時に併せて施設巡視を実施しています。

可搬式膜ろ過装置の設置状況について
2019年度は1台の可搬式膜ろ過装置を購入し、災害対策用給水装置格納庫にて保管しています。次年度以降も購入を続け、3台まで台数を増やす予定です。

災害時における井戸の運用方法について
応急給水拠点での対応を優先し、災害用の井戸からの飲料水の提供については、応急給水拠点の開設状況とさく井の濁り等の状態を鑑み、災害時において開設する井戸を決定することとしています。開設が決まった井戸については、上下水道局の職員が、可搬式膜ろ過装置、給水タンク及びスタンドなどにより、地下水の採水、ろ過処理、消毒を行い、地域の方々に飲料水を供給します。

3) 災害時使用できる水は配水池や貯水槽などに貯めた水が16万トンしかなく、一度使ってしまったら補充ができません。7か所すべての井戸を非常時すぐ使用できるようにして水道が使えるようにするべきだと考えていますが、どのような対応がなされますか。

【回答】
市民の皆様が居住している場所から約750メートル以内において応急給水が受けられるよう応急給水拠点を整備しており、その応急給水拠点の開設状況とさく井の濁り等の状態を鑑み、災害時において開設する井戸を決定するとしていることから、災害用の井戸の運用として、全箇所を一斉に開設する予定は今のところなく、周辺地区の状況に合わせて3台の膜ろ過装置で対応することとしています。

3 水不足の時の対応について
1) 以前生田浄水場があったときは、渇水時にほかの地域では給水制限されましたが、川崎市は給水制限しないで水を確保できていました。今年は雪が少なく、深刻な水不足になるといわれています。今後、相模湖、酒匂川の水量が減少し水道用水が不足したときは、どのような対応を取るのかお示しください。

【回答】
神奈川県では、平成13年の宮ヶ瀬ダム完成以降、相模川水系における総合運用や、相模川水系と酒匂川水系との2水系間の連携などによるきめ細やかや水運用を行うことで、取水制限は実施しておらず、神奈川県は他都道府県と比較しても渇水に対して非常に強い状況です。なお、令和2年6月における相模川水系及び酒匂川水系の貯水率は、約80%と近年の同時期と比較しても同等の状況になっています。

2) 川崎市は企業団などと水を融通しあうから大丈夫といつも弁明しますが、その企業団からの送水は不安定で企業団内部の委員会でも問題になっています。企業団では水源を上流に求める案が検討されていますが、川崎市は今後どのように、企業団の構成団体の一員として、市民の水を確保しようとお考えでしょうか。

【回答】
神奈川県、横浜市、川崎市、横須賀及び神奈川県内広域水道企業団(以下「5事業者」という。)は、平成22年に「神奈川県内水道事業検討委員会報告書」において「県内水道事業のあるべき姿」の構想を取りまとめました。「県内水道事業のあるべき姿」として、将来、5事業者は水道施設の共通化・広域化を図り、可能な限り上流取水への転換を進めることが記されており、企業団単独ではなく、5事業者で協力して進めていくものです。
川崎市は、将来における更なる安定給水を図るため、5事業者の一員として、これからの時代に相応しい県内水道システムの構築に向けて検討を進めていきます。

4 多摩川の土砂対策について
多摩川の土砂堆積などによって、多摩川の保水能力が減少し、多摩川に流れ込む中小河川、用水が氾濫し多くの被害が出ました。生田浄水場もハザードマップで浸水地域になっています。生田浄水場の浸水を防ぐためには、多摩川とそれに流れ込む中小河川・用水の対策が急務です。
川崎市は近隣自治体や国と協議し早急に対策を取るべきだと考えますが、見解をお示しください。

【回答】
多摩川の治水対策については、令和2年2月に大田区、世田谷区と連携し、国土交通大臣に要望を行ったところであり、今後も引き続き、国や多摩川流域の自治体と連携し、多摩川の治水安全度の向上に取り組んでいきます。

5 神奈川県内広域水道企業団との契約の見直しをしてください
川崎市は50年前の協定(日量50万トンの基本水量)に拘束されて、生田浄水場の上水部門が廃止されました。多くの市民は遠くの高価な水質の悪い、夏ぬるく、冬冷たい水を押し付けられています。したがって実際の使用水量よりも過大な基本水量の協定を見直し、基本料金を下げることを要望します。企業団依存をやめて自己水源を優先し、危機管理に備えた水量を確保してください。

【回答】
平成18年8月に策定した「川崎市水道事業の再構築計画」に基づき、将来の的確な需要予測に基づく給水能力の見直しと老朽化対策及び耐震性の強化を目的として、潮見台浄水場・生田浄水場を廃止して長沢浄水場に機能集約する浄水場の統廃合を行いました。給水能力の見直しに当たっては、最も新しく水源開発を行い広域的な立場から県内で水道用水を有効かつ的確に利用できるよう効率的な施設配置がなされている企業団からの配分水量を継続し、自己水源による給水能力を縮小することとしたものです。
企業団料金については、川崎市を含む構成団体からの要望に応え、平成15年4月の料金改定以降、4回に渡って継続して引下げ改定が実施されています。今後も、引き続き、企業団及び構成団体間で協議を行い、更なる受水費負担軽減に向けた取組を進めていきます。
企業団の水源である酒匂川、相模川の水質は、環境省の定める「生活環境の保全に関する環境基準」により水道への利用目的に適しており、通常の沈澱ろ過などによる浄水処理で十分対応可能な水源であり、本市は企業団から水道法第4条に定める水質基準を満たした安全な水道水を受水しています。
また、上下水道局では、これまでに災害時の飲料水確保として災害対策用貯水槽等の整備が完了しているほか、現在、耐震化を進めている配水池・配水塔の耐震化にあわせて、2池以上ある配水池・配水塔の1池に緊急遮断弁を整備することにより、1池の水を市民の飲料水として確保できるよう整備を進めているところです。
これら、災害対策用貯水槽等と配水池・配水塔で確保できる水量は、生田配水池の1池の水量を含めて令和元年度末で約16万m3を確保しており、この水量は、現在の市民約151万人の飲料水に換算すると約35日分に相当するものです。なお、生田浄水場用地に整備を予定している「ふれあい広場」内には、開設不要型応急給水拠点を整備する予定です。

6 川崎市の水利権の維持と生田浄水場の復活について
川崎市は相模川水系の水利権を1秒当たり7.55立方メートル保有しています。これは日量65万トンにもなり、生田浄水場の過去の水量10万トンを合わせると、153万市民に十分な水量です(東京分水分を含む)。
川崎市のこの水量の水利権を今後も維持し、水がなくて困ることのないように生田の地下水を活用して生田浄水場の上水部門を復活するよう再検討をお願いいたします。
浄水方法は環境に配慮し持続可能性の高い緩速ろ過・生物浄化法を採用するようお願いいたします。

【回答】
水利権は水需要に応じて許可されるものであり、現在の水利権水量を維持し続けることができるかは、河川管理者の判断に委ねられます。
また、2019年6月4日付けの貴会からの陳情書で回答させていただいたとおり、生田浄水場を水道事業の浄水場として新たに整備することは考えていません。
        下記写真は稼働していた時の生田浄水場




      

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  1. 「川崎市水道100周年」映画上映と水道学習会
    11月25日(木) 午後1時半 多摩市民館第1会議室
       向ヶ丘遊園駅徒歩5分
    ・川崎市上下水道局 経営戦略・危機管理室担当課長 筒井 武志氏、
    水道部水道計画課長 坂手 博氏ほか3名が出席予定
    「水は人権 命の水 生田浄水場復活を!」の映像も上映します。
    ・・・川崎の水道の歴史をたどり、これからの川崎の水道についてみんなで考えましょう。
       新型コロナウイルス感染症対策をしながら開催します。ご参加をお待ちしています!
    11月28日(日)まで川崎市大山街道ふるさと館(高津区溝口)で
    「給水開始100年―近代川崎を切り拓いた水道」の展示開催中 

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